ドイツ通信・永遠のパワーフード - レンズマメ

【スタッフErikoのドイツ通信 】

新学期が軌道にのり、10月を前に、ここバイエルンでは日に日に秋が深まっています。

戸外の風にも季節の移ろいを感じる今日この頃、そろそろ温かい料理が恋しくなってきました。

そこで今日は、最近ドイツでも人気の食材、ほっこり料理に活躍する「レンズマメ」についてお伝えします。

レンズマメは、西アジア原産の小粒のマメ科植物で、日本語では「ヒラマメ」または英語風に「レンティル」と呼ばれます。

日本国内では生産はされてないようですが、輸入食品店などで乾燥豆を購入できます。

平たい凸レンズの形をしているからこの名前がついたのかと思われがちですが、実は逆のようで、カメラやめがねに使用されるレンズがこのマメの形状に似ていることから「レンズ」と呼ばれるようになったそうです。

レンズマメの歴史は大変古く、人類が食料として利用した最古の豆類と言われています。
聖書の「創世記」にも登場し、また石器時代から食用にしていた記述も残っています。

インドやトルコで多く生産され、南欧料理にも欠かせない食材です。
たくさんの種類が出回っていて、用途ごとに使い分けされます。

たとえば、皮なしのレッドレンディルは火の通りが早く、煮崩れやすいので他の食材との馴染みがよく、ことことじっくり煮込むタイプのシチューやクリーミーなポタージュスープ、また口当たりのまろやかなディップなどに使われます。
逆に皮付きのブランやグリーンレンティルを使うと、同じ煮込み料理でもレンズマメ独特の食感が楽しめます。

豆のうま味は主に皮に凝縮されているので、皮付きを使用することでより深い味わいになるようです。

煮崩れないので、お肉の付け合わせにも重宝しますし、炊き込みご飯にもおすすめ。

また小ぶりのブラックレンィルは、ゆであがった時の様子がロシアの高級珍味キャビア(オオチョウザメ)に似ていることから、「ベルーガレンティル」とも呼ばれます。
小ぶりですが煮崩れしにくいので、食感を生かしたサラダなどに用いられます。

また他の乾燥豆のように事前に水でもどす必要がなく、短時間でゆであがってくれるのもうれしいポイントです。

そして更なる人気の秘密は、その栄養価の高さ。
ビタミンB群や植物性タンパク質をはじめ、鉄分や食物繊維も豊富に含まれており、「世界の五大健康食品」の1つに数えられるほど。

昨今のベジタリアン・ヴィーガンブームもあり、レンズマメは「パワーフード」としての地位を確立しつつあるようです。

ここバイエルンでも、しょっちゅうレンズマメに「遭遇」するようになりました。

まず、ネットのレシピ検索でもレンズマメが多くヒットしますし、人気の料理人Youtuberが家庭でもフライパン1つで簡単に作れるレンズマメのインド風煮込みを紹介するなど、密かな「レンィルフィーバー」が進行しています。


食材コーナーでもレンズマメが市民権を獲得中。
例えば挽肉の代わりにレンズマメを使った「レンズバーグ」は、自然食の専門店だけでなく、スーパーのベジセクションでも購入できるようになりました。
独特のもちもち感がなんとも美味で、我が家でもお気に入りです。

またパン食がメインのドイツでは、多種多様なスプレッドが出回っており、レンズマメ使用のものも増えてきました。

先日オーガニックショップで改めてカウントしてみたら、何とレンズマメだけで15種類、しかもアボカドやトマトピューレ・本格カレーをはじめ、なんと日本の「たまり醤油」と組み合わせた斬新なものまであり、ちょっとびっくり。

味も、以前は「美味しいよりヘルシー重視」の感が否めませんでしたが、最近っはどんどん美味しさも改善されていて、うれしいかぎりです。

カラフルなレンディルパスタもいろんな形状のものが登場、味付けしなくてもほーんのりマメの甘みがあって、やけに美味しいのです。


またスナックの分野にもレンズマメが進出中。
いかにも「クラシックなおマメスナック」って感じのシンプルなものからサワークリームテーストなどイマドキのもあり、新製品をトライするのも楽しみです

ですが、バイエルンでの不動の人気は、なんといってもワインビネガーを使った酸味のあるレンズマメの煮込み料理。

これはわりと以前からドイツの家庭で作られていたようで、「酸っぱいレンィル」と聞くと子ども時代を思い出してノスタルジーを感じるバイエル人も多い印象です。

ポテトやニンジンなどの根菜類とも相性抜群、更にベーコンやソーセージをプラスすればボリュームたっぷりの熱々料理に。
お手軽で子どもたちにも人気の1品です。

クセのないレンズマメは、いろんな食材との融合OK。
ゆでたジャガイモに、ハーブをミックスしたクワーク(凝乳=ヨーグルトより堅い質感の乳製品)を添えたものはドイツで典型的な軽食ですが、代わりにレンズマメを使ってもいつもと違った味わいが楽しめます。


かつては「貧民の食材」と不名誉な評価をされていた時期もありましたが、健康な食生活が改めて見直されている今、レンズマメはメリット満載のパワーフードとして大いに注目されています。
今後が更に楽しみな食材ですね~!